瀬戸前理事長の後任として2018年12月に本学会の理事長を拝命いたしました。公益社団法人の理事長という大変責任の重い立場にたち、改めて身のひきしまる思いを感じております。瀬戸前理事長を中心としてこれまで築き上げてきた、国民中心のインプラント医療、安全なインプラント医療を目的とする本学会の事業を継続させ、さらなるインプラント医療の発展のために尽力いたす覚悟でおりますので、会員諸氏ならびに関連各位、患者様のご理解とご協力をお願いいたします。
日本におけるインプラント治療は、1970年代以前は主に補綴家を中心とする臨床家の手により実施されてきましたが、1980年代以降に骨結合インプラントが導入され始めると、確実な咀嚼機能回復を利点として急速に普及し、歯周病専門家や口腔外科専門家においても実施されるようになってきました。1980年代以降は、GBRや自家骨移植、上顎洞底挙上術などの適応症拡大のための高度な外科的手技が必要とされる治療法や研究の発展も伴って、さらに加速度的に普及を遂げてきました。しかし、臨床における進歩に比較して、教育面での立ち後れが顕著となり、インプラント治療に関連する後遺障害をはじめとする問題点が噴出した経緯もあります。
本学会会員は、口腔外科学を基軸とする立場の大学教室や病院診療科に多くが属し、齲蝕や歯周病による歯の喪失はもとより、腫瘍や先天生疾患による骨欠損に伴う咬合・咀嚼機能の回復の目的のためにインプラント治療を行う機会も多く、基本的に外科的手技を伴うインプラント治療を行うには、知識技能の面からも最適と考えられます。
本学会の目的をあらためて顧みると、安全なインプラント治療の普及は勿論、歯科大学・歯学部等の教育機関での卒前・卒後のインプラント教育への指導的関わり、研修施設・専門医を通じたインプラント治療に伴う問題解決や継発症の治療・対応が可能な専門医・診療施設の遍く配置、また従来の補綴治療では咬合咀嚼機能の回復が見込めない高度な骨欠損・骨量不足症例のインプラント治療の国民医療としての普及などになると思います。このような目的を遂行するために、「口腔外科医への更なるインプラント治療の普及」「国民にわかりやすい専門医制度の確立」「研修会の開催」「学術大会の充実」「本学会雑誌の定期的発刊」「診療ガイドラインの策定」「治療指針の編纂」「内外の関連学会との連携」「国民医療としてのインプラント治療の確立」等を中心に、学会活動を行って参りたいと考えております。